トクコ:「…」
ケン:「トクコさん?」
トクコ:「……」
ケン:「Tokuko! Are you alright??」
トクコ:「あっ!はい!どうしました?」
ケン:「だいじょうぶデスカ…」
トクコ:「…すみません、お邪魔でした?」
ケン:「いえ…何を見てるの?」
トクコ:「もっと注意深く、もっと時間をかけて、
全部を見たいなと思って、見てます」
ケン:「注意深く、見る、ですか?」
トクコ:「ええ… 毎日忙しくしていると、
つい色々見逃しちゃいなことって、結構あるので…」
ケン:「Hmmm … You’re right。毎日、忙しい…」
トクコ:「例えば、この倉庫の棚…
すべてが整っているように見えますよね。
でも、よく見ると…
ほら、4列目の3番目の箱、ラベルの色が少し違うのがわかりますか?」
ケン:「ワオ!…これ、マチガイ?」
トクコ:「どうでしょうね‥‥
でも大切なのは、この小さな違いに気づくことですね。
どれだけ大きな問題を防げるか…
注意深く見ることが、
リスクを減らし、効率を上げますよ。」
ケン:「ンンーーー…」
ケン:「But, how do you see it with care? …
あ、Ah… how can I put this… Do you get what I mean?」
トクコ:「大丈夫(笑) それくらいの英語なら、分かるから。
注意深く見るコツは3つあります。
1つ目は、一度立ち止まって全体を見ること。
普段は、慌ただしい中で目に映るものをそのまま処理しがち。
まずは全体を眺め、目に留まる違和感を探してみる。」
トクコ:「2つ目は、具体的な基準を持つこと。
例えば、ラベルの色、配置、箱の大きさとか…
自分で観察するポイントを決めて、
それを意識的に確認するだけで精度が上がる。」
トクコ:「これが最後だけど、3つ目。
それは変化を意識すること。
いつもと違う点や、
前回の状態との違いを記憶しておくと、
些細な変化にも気づけるようになりますよ。」
ケン:「Hmmm…There are lot to learn!」
トクコ:「そうなんです(笑)
それと、注意深く見ることで、新しいアイデアも生まれるんです。
例えば、ここに積まれている箱…
運ぶ距離が必要以上に長い気がしませんか?
あと、この通路の端、何か小さな黒い粒子が…
もしかして、これはフォークリフトのタイヤから削れたゴムかな。
あ、エリアの照明、少し暗くないですか?
明るさが不十分だと、商品のラベルが見えにくく、ミスが起こりやすくなるかも…」
ケン:「Wow! Incredible! You notice a lot of things! Hahaha!」
???:「おう。ケン。どうした?」
ケン:「あ、ゴローさん。」
ゴロー:「…あんた、トクコさんだっけ?」
トクコ:「は、はい」
ゴロー:「正直言わせてもらいますけどね…
私らはこのやり方で何年もやってきたんですよ。」
トクコ:「…す、すみません。別に非難するつもりは…」
ゴロー:「突然来た人に、いろいろ指摘されてもね…」
トクコ:「…そ、そんなつもりじゃないんです。
皆さんのやり方を否定したいわけじゃなくて、
もっと良くなる方法を提案したくて…」
ゴロー:「口で言うだけなら、誰だってできるんですよ。」
トクコ:「……」
ゴロー:「おうケン、行くぞ。
作業が山積みなんだ。
余計な口出しされるより、自分たちで動いたほうが早い。」
ケン:「は、はい」
トクコ:「…」
(ケンは戸惑いながらもサトルについていき、倉庫の奥へと去る。)
ツトム:「……まぁ、あれだな。
現場もプライドがあるからな…
気にすんな、トクコさん。」
トクコ:「……でも、私はただ……
少しでも役に立ちたかっただけなのに……」
ツトム:「…分かりますよ。
まぁ、全員が全員、提案を素直に受け入れるわけじゃないから。」
トクコ: 「……私、前の職場でも、こんな感じだったんです。」
ツトム:「…え…?」
トクコ:「観察して、気づいて、
それを言葉にして伝えたら、
『余計なことだ』って……そればっかり。」
ツトム:「……」
トクコ:「私が間違ってるのかな。
気づいたことを言わないほうがいいのかな……」
ツトム:「いや…
ただ、タイミングとか、言い方とか、
そういうのも大事なのでは…
でもまぁ、難しいですよね」
トクコ:「ありがとう、ツトムさん。
…そうですね」
トクコ:「…そういえば…
ラクさんが観察力を今後使ううえで、
気をつけて欲しい点を言っていたような…」
ツトム:「え………?」
トクコ:「なんだったかな…
あ、いえ…
ちょっと、あとでよく思い出してみます」
次のエピソード
次の話は、以下から!
参考文献について
なお、この「ラクとトクコの職場(ストーリー編)における「トクコの能力」は…
FBI、CIA、スコットランドヤード、アメリカ陸海軍、ナショナルガード、シークレットサービスなど、名だたる機関に対して行われた「エイミー・E・ハーマン」さんの「知覚の技法」を基に作っています。
つまり、実在する技法です。
(「イスパイアル」の名称は、私が勝手に物語を分かりやすくするためだけに作ったものですが…笑
そして、もちろん「5倍の速さで観測できる」というのも、本ストーリーオリジナルの設定です。)
まだまだ序の口なので、これからどんどん「実生活に活かせるような形」でご紹介できればと思います。
本書では、アートを教材として情報収集能力、思考力、判断力、伝達力、質問力などを鍛えるコツが記載されています。