マナミ:「…事前にデータを見ずに?」

トクコ:「はい。
データを先に見ると、
そっちに引っ張られる
ことがあるので…
まっさらな目で見た方が、
気づけることがある気がして」

マナミ:「…それは、
非効率だと思います」
トクコ:「非効率、ですか」
マナミ:「はい。
何を見ればいいかが
分からないまま
現場に行っても、
重要なものを見逃す
可能性がある。
データで仮説を立てて、
それを現場で確認する方が
確実です」

(トクコ:
…間違っては、いない。
でも、なんか…
もう少し、話してみよう)
トクコ:「でも、
データで仮説を立てると、
その仮説の外にあるものが
見えにくくなりませんか?」
マナミ:「…それは、
準備が不十分な場合の話です。
十分なデータがあれば、
見落としは最小限になる」
トクコ:「でも、
データに出てこない問題も
あると思うんですよね。
数字に表れない、
現場の空気とか、
人の動き方とか」
マナミ:「…トクコさんは、
直感で動くタイプですか?」

(トクコ:あ。
この言い方は…
批判として言ってるのか)
トクコ:「直感、というより…
観察、ですかね」
マナミ:「観察なら、
データも立派な観察対象です。
やる価値のある仕事なら、
きちんとやる価値がある。
事前準備はその一部です。」

(トクコ:あー…
なるほど。
だからさっき、
倉庫見学にすぐ行くのも、
渋っていたんか。

事前準備もろもろをする
時間と労力を考えて…
ふーむ…
これは仕方ないな。
私が折れるか。
あとはどれくらい、
私が倉庫現場で
マナミさんに伝えられるか…)

トクコ:「…分かりました。
読んでおきます」
マナミ:「よろしくお願いします」

(トクコ:…うーん。
マナミさんの言ってること、
間違ってはない。
データは大事やし、
準備も大事。
でも…
なんか、
引っかかる。

マナミさんにとっては、
完璧な準備をすることが
「きちんとやる」ことで。
それ以外のやり方は
「きちんとやっていない」になる。
…そのフィルターで
私を見てる気がした)

(トクコ:…観察に
関することやから
ラクくんに
意見聞いてみたいけど…

なんか隠してるからな、
あの二人…
はーちゃんに
聞いてみようかなぁ…)

(夕方、
オフィスの屋上で)
バウ:「…オマエはバカか!
あんな露骨に
観察してたら
本人だってイヤな気分に
なるだろが!」

ラク:「すみません…つい」

バウ:「…焦る気持ちも分かる。
しかしな…」
ラク:「……」
バウ:「…お前は、
ケイがなぜ、
お前を遠ざけたか…
考えたことがあるのか?」

ラク:「…!!」

バウ:「…ワシはケイに
会っていない。
だから確証も無い。
…だがな、
彼女はお前のその
類まれな観察眼を
よく知る人間だった。
…違うのか!?」

ラク:「…まさか…
僕の観察が…
原因?」
バウ:「…それは知らん!
だが、
そういう可能性も
考えられるだろ…」
ラク:「……」
バウ:「…それでも彼女は
お前を慕っていたんだろ。
…それも忘れるんじゃねぇよ
そう言う意味では、
今のワシの仮説は
合ってねぇんだよ」

ラク:「……」

バウ:「…な…
なんだ!??」

ラク:「…また…
砂時計が!」


ラク:「…光って…!」

…
「…あ、
ごめんなさい…」

「…聞きたいことがあって」


「でも、タイミング、
悪かったかな」

「…なるほど」

「前にバウさんが
見せてくれたとき、
『私に反応する』って
言ってたけど…」

トクコ:「そんな風に
反応するんやね」

