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40代・50代がもう少し楽に生きるために
ラクとトクコのいる職場~40代からのサバイバル~
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  2. ~エピソード30~私には出来ないこと

~エピソード30~私には出来ないこと

(木曜日の朝。
オフィス)

 

(マナミ:

 …やはり分からない。

 C区画の事故件数が

 データより少ない理由。

 

 危険度の数値は高いはずなのに。

 B区画との違いは何なのか。

 

 このデータだけでは、

 見えない何かがある…

 今日、

 現場で確認するしかない) 

 

(その日の午後。
倉庫)

 

トクコ:「こんにちは、

     ヨシダさん。」

 

ヨシダ:「あぁ、トクコさん、

     今日は

     よろしくお願いします。」

 

マナミ:「よろしくお願いします。」

 

トクコ:「初めて来ましたが、

     随分広いですね…」

 

ヨシダ:「そうなんです。

     これが弊社が今持っている

     最大の倉庫になります。」

 

マナミ:「確認したところ、

     事故が多いのはB区画です。

     C区画もデータ上は

     危険度が高いはずなんですが、

     実際の事故件数は

     ずっと少なくて…

 

     何度データを確認しても、

     理由が分からないんです」

 

トクコ:「なるほど…」

     

ヨシダ:「あぁ、

     こちらがB区画で

     あちらがC区画ですね。

     それぞれご案内しますね。」

 

(トクコ:……)

 

 

マナミ:「お願いします」

 

 

トクコ:「すみません、

     少し全体を

     見てもいいですか?」

 

ヨシダ:「え?

     全体?

     あ、はい、

     どうぞ」

 

トクコ:「……」

 

 

(トクコ:うーん…

     逆にもう

     既に色々見えすぎるな…

 

 

トクコ:(…

 

     落ち着け)

 

 

マナミ:「…

     …トクコさん?」 

 

 

トクコ:「うん。

 

     よし。

 

     行きましょうか。」

 

 

 

 

マナミ:「…

     …ヨシダさん

     すみません。

  

     ちょっと私のノート、

     持っててください」 

 

ヨシダ:「え?

     …ええ」

 

 

マナミ:「ま…待って
     

     ‥‥ください!」

トクコ:「え?」 

 

マナミ:「さ…さっき

     全体を見るって

     仰いましたよね??

 

    それが、逆に目を閉じて

    『うん、よし』って!

  

     ちっとも良くない!

    

     大体あなたは

     そもそも今回のために

     準備なさったんですか??」

マナミ:「ヨシダさん!

     

    ノート落ちました!」

     

 

ヨシダ:「ひいぃ!

     すみません!

     

     び、びっくりして…」

 

(トクコ:私のついでに

     怒られてはる… 

 

     もしかして

     間が悪い人?💦)

 

マナミ:「あ、

     す、すみません!

     つい、興奮して…」 

  

トクコ:「あぁ、いやいや…

     私が悪かった。

     ちゃんと

     説明すべきでしたね」

  

トクコ:「そうやね…

 

 まずじゃあ、照明から。

 

 照明はB区画の奥が暗い。

 おそらくC区画との
 差が大きい。
 B区画の天井は
 蛍光灯が八本。
 そのうち二本、
 光量が落ちている。
 奥の照度は、
 手前の六割ほど。
 C区画との差は歴然かな?

トクコ:「あと、通路…

 左から三番目が、
 他より狭い。 
 目測で七十センチほど。
 標準は九十センチ前後
 ということは、
 二十センチ近く足りない。
 すれ違いに難がある幅。

 トクコ:「それから床。

 中央に引きずり跡。
 幅二十センチ、
 長さ三メートルほど。
 色の濃淡から、
 月単位で繰り返されている跡。
 手前の棚下から
 3列目向こうの角まで。
 ルートが一定している。」

 トクコ:「人の動線は、
 二か所が交差している。

 どちらも棚の角で
 死角になっている。
 交差角度はほぼ直角。
 互いに見えないまま
 ぶつかる構造に
 なっている。」 

 

 トクコ:「あとは…

 滑り止めかな?
 確認できる範囲で
 十四か所に貼ってある。

 でも、 
 あの棚と棚の間だけ、ない。
 剥がれた跡が
 微かに残っている。

 つまり、 
 貼られていたのに、
 なくなっている。」

 トクコ:「空気は左奥、
 湿度が高い。
 他のエリアより体感で
 五パーセント前後か。

 おそらく水を使う設備が、
 十メートル以内にある…

 

 …って、

 話、聞いてた?」

 

マナミ:「…トクコさん、

     本当にすみませんでした」

 

トクコ:「え?

     やっぱり

     聞いてなかったの?」

 

マナミ:「そうではありません。

     まだこの倉庫に入って

     わずか5分程度。

 

     それなのに、そこまでもう

     お気づきに

     なられていたなんて…

     お、お見それしました。」

 

トクコ:「いやいや。

     まだまだ逆にこの程度で…

     もっと長く見てれば、

     きっともっと

     色々見えるんです。」

 

マナミ:「え…?」

 

トクコ:「でも、

     気をつけないと

     いけないことも

     あって」

 

マナミ:「…何ですか?」

 

トクコ:「細かいところに

     こだわりすぎると、

     … 

     今度は

     全体が見えなくなる。」 

 

マナミ:「……!!」

 

トクコ:「全部追いかけようとすると、

     全部を処理できなくなる。

 

     だから私がやってるのは、

     まず全体を見て、

     引っかかったものだけを

     拾う、

     っていう感じかな…」

     

マナミ:「…だからいったん

     目を閉じて、

     敢えて細部を

     追わないようにしたんですか?」

 

トクコ:「うん。

     まだ、今の時点では、

     あるべきものがない、とか、

     他と違う、とか。

     そういうものを

     見たくてね」

 

     

 

トクコ:「じゃ、

    今度こそ、

    行きましょうか」

 

 

(マナミ:この人は…

 

    私がずっと

    データと格闘して

    辿り着けなかったものを、

    目の前で見ただけで

    拾っていた。

 

   …なぜ分かるんだろう。

 

    データがなくても、

    なぜ分かるんだろう。

     

    トクコさんは、すごい。

 

    私に出来ないことが、

    出来る!)

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