バウ:「ワシの知る限りを
話そう。」

はーちゃん:「今、ここで
砂時計を
出せるんですね」
バウ:「あぁ。ワシとラクは、
念じることで呼び出せる。
…
この砂時計は
古い伝承に
名前だけ残っていたものだ。
ただ、伝承は断片的でな。
どこまでの力があるのか、
ワシ自身も
全ては知らない」

はーちゃん:「…知らない?」
バウ:「この砂時計は、
ラクと出会うまで
長い間、眠っていた。
眠っている間は
ワシも力を
感じ取れなかった。
ラクと出会い、
あることがきっかけで、
目覚めたのだ」
はーちゃん:「あること…?」

バウ: 「背景はまたいずれ話そう。
まずこの砂時計の説明だ。
上に残っている砂は、
ラクがまだ
手放せていないものだ。
…単純に言えば、
乗り越えられていない
後悔のようなものだろう。
…それが、まだ上にある」

はーちゃん:「…これは今、
落ちているように
見えているけど、
実際には
今は砂は落ちておらず
止まっていますね…
何がきっかけで
下に落ちるのでしょう?」

バウ:「これは推測だが…
ラクの観察力が、
トクコを通じて
誰かの役に立つたびに、
砂が落ちる。
…あるいは、
トクコが大きく成長するたびに、
砂が落ちる…
下に落ちて溜まることは、
ラク自身の心が
強さを取り戻していることを
示すのではないかと
ワシは見ている」

はーちゃん:「…
つまり、
トクコの成長が、
ラクさんの回復に
繋がっている…
ということですね」
バウ:「おそらく…な」

はーちゃん:「…まさか、あなたは…
だからトクコを
リーダーに…?
彼女の成長を促し、
ラクさんを救うため?」
バウ:「…いや、それは違う。
少なくともワシはトクコを
リーダーに推薦したとき、
この砂時計の仕組みは
まだ分かっていなかった。
トクコの類まれな観察力を知り、
何かのきっかけにと思い、
ラクと繋ぎ止めたかっただけだ。」

はーちゃん:「……」
バウ:「ここからも更に推測だが、
砂が全部下に溜まったとき、
この砂時計は反転する。
それはつまり、
これまで逆転していた
ラクの時間が
元に戻るということになる。」

はーちゃん:「元に…?」
バウ:「要するに、ラクは
大人に戻れるのではないかと、
ワシは思っている」

はーちゃん:「…大人に戻る…」

バウ:「多分な。
もしそうなら、
そのときは近い。
現に、砂時計は
共鳴だけではなく、
トクコの大きな成長に応じて、
ラクに過去を見せている」

はーちゃん:「過去を…
どういうことですか?」
バウ:「ラクは一度、
過去の世界に引き込まれた。
あの頃のラク自身と、
そしてあの娘が
いた世界に…
ラクを試しているのか、
それとも…
過去を修正する機会すら
与えようとしているのかも
しれない」

はーちゃん:「…過ぎ去った時間を
変えることができると?」
バウ:「ワシにも、
確かなことは分からない。
そんなことが起きれば、
確実にタイムパラドックスだ。
砂時計が
そこまでの力を持つとすれば、
伝承に残っていた
どんな力よりも
大きなものだ。
…それに関しては、
正直非常に恐ろしいと
ワシは思っている」

はーちゃん:「…ラクさんが仮に
砂時計に試されていると
したら…
何を試されて
いるのでしょう?」
バウ:「……
過去に失った人…
いや…それ以上に、
自分と
向き合うことだろうな。
…その多くは今、
まさにラクがトクコから
学んでいると言ってもいい」

はーちゃん:「…そうですか」
バウ:「ここまで話して、
ようやくお前さんに
伝えられることを
今、伝えておきたい。」

はーちゃん:「…なんでしょう?」
バウ:「…それは、
お前さんが
トクコのそばにいることが、
ラクの時間を
動かしているのかもしれない
…
ということだ。」
はーちゃん:「……」

バウ:「トクコが成長するたびに
砂が落ちるなら、
トクコの成長を
一番近くで支え、
見守り、
優しく包んできた
お前さんの役割は、
小さくない。
トクコだけじゃない。
ラクにも、
ワシにとってもな。」



はーちゃん:「…ありがとうございます。
まさか他の誰かに
そんな風に
言われる日が来るとは…」

バウ:「いや、
礼を言うのはワシの方だ。
ありがとう。」

(その日、
夜のオフィス)






(ラク:ケイ…
すまなかった…)

