(休日の朝。トクコの部屋)
トクコ:「おはよう、はーちゃん」
はーちゃん:「おはよう、トクコ」
トクコ:「なぁなぁ、私のサイフ知らん?」

はーちゃん:「昨日、
玄関に置きっぱなしだったよ」
トクコ:「あれ?そうやったっけ…
今日や休みやし、久しぶりに、
ちょっと美術館行ってくる。
少し冷えるみたいやけど、
天気もいいし」
はーちゃん:「寒暖差、激しいね。
美術館は久しぶりだね」

トクコ:「最近ずっと人を見てたから、
たまには絵でも見たくなって。
絵は観察しても
何も言わへんから、
気が楽やしなw」
はーちゃん:「…でもこの前、
美術館行ったら、
結局、隣の人を
ずっと観察してたって
言ってなかった?」
トクコ:「そうそう!
絵の前で立ったまま寝てる
オジサンがいたからな(笑)」

トクコ:「で、なんか、
その人が疲れてそうやな、
って思って。
つい声かけてしまって」
はーちゃん:「え、知らない人に?」
トクコ:「うん。
『絵の前で立ったまま
寝てましたよ』って」

はーちゃん:「…それ、
余計なお世話では💦」
トクコ:「いや、ほんとに目を
閉じてたんよ!
でも、その人、
学芸員さんやってん。
寝てたように見えたんやけど…
実は考え込んでたらしくて」

はーちゃん:「えええ…
やっぱり
余計なお世話だったか(笑)」
トクコ:「いや、あれは絶対
寝てたけどな…
まぁ今日は、
絵だけ見てくるわ(笑)
いってきまーす」
はーちゃん:「いってらっしゃい。
ゆっくりしてきて」
(トクコ、美術館に到着)
トクコ:「ほえー…
相変わらず立派やなぁ」


(トクコ:うんうん、
やっぱり落ち着くわぁ)

(トクコ:あ…)

(トクコ:なんかああやって、
スマホを絵で撮影して…
後でスマホで見るのと、
ここで直に見るのとは、
ちょっと違う気がする…)

(トクコ:レンズ越しに見るものと、
自分の眼で
見たものの違いって…
なんやろうなぁ)

(トクコ:ふむ……)

(トクコ:まず、全体を見る。
急いで細部に入らない。

色の配置——
青と白が空を占めている。
手前に赤みがかった建物。
水面に光が反射している。
光源は左上から来ている。
影は右下に伸びている。
構図の中心は——
塔だ。

視線が自然にそこへ行く。
なぜそこへ行くのか。
高さがあるから。
色が周囲より濃いから。
垂直の線が目を引くから。
…次に、細部。
水面の描き方。
小さなタッチが重なっている。
印象派的な技法だ。

近づいて見ると点の集まり
だけど、
離れると水の揺らぎのように
見えるのか…
…あれ?

右端に、小さな人影がいる。
最初、気づかなかった。
でも確かにいる。
構図の端に、
ほとんど溶け込むように。
でも、ちゃんと描かれている。

この前の倉庫見学みたいに、
…本来あるべきものが
欠けていることに気づく、
というのはあったけど、
その逆もあるな…

「あるのに、
見えていないもの」
この人影みたいに。
…気をつけないと。
目立つものだけを見て、
分かった気になってしまう。
本当に大事なものは、
端っこにあったりするかも。)

でも、絵を見るとき、
誰かに気づかれる心配がない。
絵は、見られても何も言わない。
…なんか、楽やな

ペースを落とす、
ってこういうことかも。
急いで次に
行かなくていい。
見たものを、
ちゃんと染み込ませる…
うんうん。
これこれ。
大事大事。

(トクコ:…ん…?)

(トクコ:…この絵、誰もいない。
でも、なんか、
誰かがいた気がする。
あるいは、
誰かを待ってる気がする。
…不思議やな。

椅子しか描かれていないのに、
そこにいないはずの人が、
伝わってくる。
存在しないものが、
存在するものと同じくらい、
何かを語っている)

「ない」のに、「ある」感じ。
「いない」のに、「いる」感じ。
…なんやろう。
なんかモヤモヤするな)

(さらに別の展示室に移動)


(トクコ:…
中心に描かれてる人たちは、
目立つ。
色も、大きさも、
構図の中心にいる。
でも、端の方に…
ほとんど見えなく
なってる人がいる。
構図の外側に、
押し込められている。
でも、
この人も確かに、
そこにいる。
…描かれている。

画家は、ちゃんと描いた。
でも、
構造のせいで
見えなくなってる…?
人によって
見えるものや、
意識されるもの…
そして、
その外側に
存在するもの。

誰もいない椅子に、
誰かがいた気がしたみたいに。
言葉にならなかったものの中に、
本当は
言いたかったことがあるように。
…そういう人が、
職場にも
いるかもしれへんなぁ…

私よりも観察力がある
ラクくんくらいになれば、
そういう人に、
気づくことができるのだろうか。
…それとも
…)

(トクコ:…って…
あっ!
あの人は…
やっぱりどう見ても、
寝てるやんw
今回は、
もうそっとしとこw)

次回について
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第一話は、以下から!
~エピソード 0~ – ラクとトクコのいる職場 (managerbeginner.com)
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シーン別 – ラクとトクコのいる職場 (managerbeginner.com)
参考文献について
なお、この「ラクとトクコの職場(ストーリー編)における「トクコの能力」は…
FBI、CIA、スコットランドヤード、アメリカ陸海軍、ナショナルガード、シークレットサービスなど、名だたる機関に対して行われた「エイミー・E・ハーマン」さんの「知覚の技法」を基に作っています。
つまり、実在する技法です。
しかし、もちろん本ストーリーに合うため、少し大げさにしています(笑)
まだまだ序の口なので、これからどんどん「実生活に活かせるような形」でご紹介できればと思います。
本書では、アートを教材として情報収集能力、思考力、判断力、伝達力、質問力などを鍛えるコツが記載されています。

