ーー外出の仕事から戻るトクコーー
トクコ:「ラクさん、ただいま戻りました」
ラク:「あ、はい、おかえりなさい…」
トクコ:「…あれ…?なんかいる…犬?」
ラク:「あぁ…あれは…バ…」
犬:「おぅ兄弟!…皆まで言うなって…」
トクコ:「………」
犬:「………」
(トクコ:「皆まで言うな?」
いや…あたし動物としゃべれるんやけど…
あ、あかんあかん。
あたしが動物としゃべれるってバレない方が…
しかし、なぜサングラスを…)
ラク:「え、バウさん、皆まで言うなって…
どうやってトクコさんと話すつもりです?
あなたと話せるの、僕だけなんですよ?」
トクコ:「……! ラ…ラクさん!
ラクさんも動物と話せるんですか???」
ラク:「あ、いえ、このバウさんだけは特別で…
なぜかお互い会話ができて…
あれ?ラクさんも…?
…トクコさん、動物と話せるんですか!?」
トクコ:「……!
おぉう、言っちまったぜ」
犬:「ワシは気づいてたぜ。
そのおなごが動物と話せることをな…」
トクコ:「……え…?」
犬:「このおなごの観察力の高さは…兄弟から聞いていた。
それに、ワシの仲間たちも『動物と話せるおなごがいる』と、
言っておったからのぅ…
もしかしたら、とは思ってたんじゃ」
トクコ:「……は、はぁ…」
サングラスの犬:「ワシの名は、バウじゃ。見知りおけ…」
トクコ:「……は、はぁ…
初めまして、バウさん。
あ、あの、あたしはトクコです。」
ラク:「…すごいですね、トクコさん。
ホントにバウさんと会話が出来てる…」
(トクコ:き…聞きたいことがありすぎて、
何から聞いたらいいか、わからへん…!)
バウ:「時に、嬢ちゃん…」
トクコ:「……は、はぁ…」
バウ:「おめぇさん、職場の人間関係で一番大切なものって、何だか分かるか…」
トクコ:「……え…、ひ、必要なもの?
きょ…距離感…でしょうか?」
バウ:「ふっ…お前さんもまだまだ若いな…
いいか、よっと!」
(バウは机の上にジャンプで飛び乗った!)
バウ:「ワシはなぁ…こう見えても若いころ、
ここらへんの走り屋をまとめてたリーダーだったんじゃ…」
トクコ:「は…走り屋…?」
バウ:「そうじゃ…まぁ巷では、
『ドッグラン』とか言うらしいけどな…」
(トクコ:ホンマにただ自由に走るやつやん…)
バウ:「いいか。あんな空間でもな、
それなりにやっぱり縄張りはあるんじゃ。
不毛な争いを好まんワシは、皆を集めて『組』を作ることにしたんじゃ…」
トクコ:「組…ですか!??え、ヤクザみたいなものでしょうか?」
バウ:「まぁ…人間の世界ではそんな感じかもしれん。
しかしな、ワシらは暴力は使わん。
任侠とは、本来弱きものを守るためにある。
最近では誤解されてるがな…
人間がこれだけたくさん居る『会社』も、それに近いとワシは思う。
犬の世界でもチームがあって…
皆が皆、仲間のために生きることを決めたんじゃ。
トクコ:「な…なるほど…
でも、そういうのって…意見が対立したり…
人間…じゃない。「犬関係」を維持するのって難しくないですか?」
バウ:「当然だ。
しかしそもそも、生きることは一人では無理なんじゃ。
だからこそ任侠の世界では、信頼こそが大切。」
トクコ:「信頼…」
バウ:「そして信頼はどうやってできるのか。
それは、焦らず、話し合いを続けること。
小さな1歩を重ねることじゃ。
これは堅気の世界も変わらんだろ。
今までも、これからもな…」
ラク:「………」
(ラク:この話、100回は聞いたな…)
バウ:「ただ…
信頼や、固い絆みたいなものは、現代では築きにくい。
なぜだか分かるか…」
トクコ:「固い絆が築きにくい…
言われてみれば、確かにそうかも…
な、なんやろ… 考えてみたこと、無かったな…
バウ:「まぁそんなこと、ひとつの答えがあるわけじゃねぇんだが。
挙げるとすればおそらく、即欲(そくよく)だ。」
トクコ:「即欲…?そんな言葉、ありましたっけ?」
バウ:「無い。ワシが作った。
最近はどうも、即座に欲を満たそうとする傾向が強いように思う。
我慢が足りんと、言い換えてもいいが…
すぐにダメ、すぐに欲しい、すぐに行動…
ガマンが足りんのかもな…」
トクコ:「…ガマンか……」
ラク:「あの、バウさん。お話のところ悪いんですが…
今日のおやつ切れちゃってたんで、明日まで待ってもらっていいですか…?
買いに行くの、面倒なんで…」
バウ:「…」
バウ:「…そりゃおめぇ…
…
あれだ…
即、欲しいやつだ…」
トクコ:「………」
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