
「また余計なこと言ったかも」
些細な一言が、
誰かを傷つけることがある。
…でも
相手の反応、ふとした仕草、
表情の揺らぎ―
私は、どうやら…
他の人よりも、
「見えてしまう」らしい。

――上司。
仕事の打ち合わせで、資料を何度か読み飛ばしていた。
ふと上司を見ると、左手首に血圧計の跡…腕に注射の跡…顔色も悪い。
さらに、デスクの上に健康診断の結果通知書が裏返しで置いてある。
資料の数字を読み飛ばしたのは…健康診断の結果が原因なのだろう。
毎日お酒ばっかり飲んでるから、そうなる。
つい言ってしまった。
「…会議お疲れ様です。これを機会に、少し禁酒ですね」

――同僚。
同僚がトイレから戻ってきたあと、明らかに目を赤くしていた。
右目だけが特に充血し、瞼の下に軽い腫れ。コンタクトレンズのトラブルだ。
さらに、左手の人差し指に、出来たばかりの小さな傷…
新しいコンタクトのパッケージを慌てて開けた時についたものだろう。
普段は眼鏡なのに、今日は重要な会議があるからコンタクトに変えた。
でも慣れないレンズが目に合わず、トイレで格闘していたのだ。
つい言ってしまった。
「会議は、眼鏡の方が良いと思うよ」

――後輩。
メールに「今日は特に問題なく終了しました」と書いてある。
でも違和感がある。普段は「お疲れ様です!」から始まるのに。
送信時刻も22:47で遅すぎるし、いつもは丁寧な文章なのに今日は誤字が3つもある。
…今日の午後、経理部の田中さんが彼のデスクに来ていた。田中さんの表情は険しく、後輩の顔は青ざめていた。
つい言ってしまった。
「交通費、今度からウソは無くして正しく請求するようにね」

たとえ
「相手を想って」でも、
きっとそれは…
余計なことで、
察しすぎていて、
誤解されやすく、
踏み込み過ぎで、
相手のメンツを潰す

それでも
…
私には…
…
見える



このチカラは…
…呪いだ
だからもう、
私は気づいても、
口にしない。
子供の声:「ねぇ…」
…???
子供の声:「それ…
ホントに、
…見えてる?」

え…?
どういうこと?
…あなたは…誰…?
…トクコ…!
…トクコ!!
…トクコ!!!
…
トクコ:「うーーーーん……」
…
トクコ:「………おぉ、夢か。」

??:「大丈夫…?
随分うなされてたけど…」
トクコ:「…今、何時?」
??:「朝5時…くらいかな」
トクコ:「…早いなぁ」
??:「…まだ寝ててもいいんだよ」
トクコ:「……新しい会社、今日からやし……
もう起きて、着替えるわ」

??:「……緊張してる?」
トクコ:「うん……なんやろな。
前の会社のこと、思い出してもうて」
??:「また“人間関係地獄”に、
巻き込まれるんじゃないかって?」
トクコ:「そうやねぇ…
私の場合は、観察地獄かな」
??:「地獄には変わりないんだね💦」
トクコ:「…
…って…あれ?
はーちゃん?」

植物のはーちゃん:「え?」
トクコ:「昨日より…
ちょっと葉っぱ増えてへん?」
植物のはーちゃん:「えぇ!?
そ、そうかなぁ(照)」
トクコ:「あれ?
…なんか、ちぎれてるわ」
植物のはーちゃん:「ぎやぁぁあああ!!」
トクコ:「まぁ…
…言うても2ミリくらいかな。
少しだけ。他は大丈夫。」
植物のはーちゃん:「なんだ、じゃあいいや。
驚いて損したよ」
トクコ:「いいんや💦」

植物のはーちゃん:「それにしても…
相変わらずよく見てるね…」
トクコ:「……そういうの、
見えてしまうんよね。私は。」
はーちゃん:「…その観察力があるから、
君は植物や動物たちと
会話できるわけだけど」
トクコ:「…そうなのかな…」
はーちゃん:「でもさ、トクコは“見る”人でしょ?」

トクコ:「…えぇえ…変なこと言うなぁ」
はーちゃん:「だって、そうでしょ?
見えすぎて…悶々として、
それでもまだ見ようとしてる。
わざわざ拾いにいってるでしょ?」
トクコ:「……拾いたくて拾ってるわけちゃうよ。
目が勝手に拾ってしまうんよ。
目線とか、指の動きとか…
気づいたら、全部入ってくる」

はーちゃん:「見えてしまうんだね」
トクコ:「……うん」
はーちゃん:「トクコ…
今日から、どんな会社だっけ?」

トクコ:「……ペットフードの会社。
サプライチェーン部門」
はーちゃん:「また…人間と関わる仕事、だね?」
トクコ:「………“また”、ね」
はーちゃん:「…ねえ、
ちょっと、休んだら…?
ゆっくりしてもいいんだよ?」
トクコ:「………」

はーちゃん:「……トクコ?」
トクコ:「あぁ……うん…ありがと」
はーちゃん:「…行くんだね?」
トクコ:「うん。大丈夫。」
はーちゃん:「おう、じゃあ戸締りは任せとけ」
トクコ:「…出来るん?」

はーちゃん:「冗談に決まってるでしょ」
トクコ:「ははは。まぁじゃあ行ってくるわ」
はーちゃん:「いってらっしゃい~」
