(次の日、オフィス。廊下にて)


(トクコ:え…と、
人事の部屋は、確かこの辺に…

…人事に…なんて言おうかな…
「私がリーダーやります!」
…かな。
…「はいよろこんで!」とか?
…なんか、居酒屋みたいやな…
あぁーーー…
はーちゃんと細かく打ち合わせしとけば良かったぁ…

…ん?)
バサバサ!
(廊下で、男性が大量の書類を落としてしまう)
??:「あ!しまった!
やっぱり一度に運び過ぎたか…」

トクコ:「だ、大丈夫ですか?」 (一緒に書類を拾い始める)
??:「すみません、ありがとうございます!」
トクコ:「す…すごい量の書類ですね」

??:「いえいえ!皆さん忙しいので!
僕に出来ることをやっているだけです!」
トクコ:「そうなんですか。
大変ですね…」
??:「ええ。うーーん…
ま、まぁ、なかなか…
最近、指示系統がちょっと…」

トクコ:「…指示系統?」

??:「あぁ、その…マネージャーが不在で、
人事経由で連絡をもらってるんですが…
なかなか大変で。
でも自分はまだまだ新人なので!
なんとかお役に立てればと思っています!」
(トクコ:初々しいなぁ…
でもなんか、大変そうやな)
トクコ:「…ハイ!
これで全部拾えたかな」
??:「あぁ、ありがとうございます!
助かりました!」

…あ、マナミさん、お疲れ様です!」
マナミ:「あ、あぁ、
ケンジくん、…お疲れ」

ケンジ:「最近残業多いみたいですが、大丈夫ですか?
何かお手伝いできることあれば…」
マナミ:「いいよ。大丈夫。
それに、
書類も自分で運ぶって言ったのに…」
ケンジ:「いえいえ!
これくらい、僕がやりますから!
マナミさん、いつも大変そうだし!」
マナミ:「……(ふぅ)…
あ、そ…」

ケンジ:「やっぱりタクトさんが
いてくれるといいんだろうなぁ」
(トクコ: ……?
なんか微妙な空気やな

(マナミが去る)
ケンジ:「あの、もしかして、
最近入社された方なんですか?
お見かけしたこと無いなと思って…」
トクコ:「え?あ、あぁ。
そうなんです。
実は3日前に入社したばかりで…
トクコと言います。
…
あの、人事の部屋って、この辺りでしたよね?」
ケンジ:「えぇ。人事の部屋はちょうどこの廊下の突き当たりです。
僕はサプライチェーン部門のケンジです!」

(トクコ: ……サプライチェーン部門!
私がリーダーをする予定の?

ケンジ「さっき通りかかった、マナミさんもの同じ部署です!
またお困りのことがあれば、いつでも声かけてくださいね!
ではこれから会議がありますので、これで!」
(トクコ: …
「指揮系統が問題」…
「タクトさんが居なくなった」…
まさか、
私がそのタクトさんの代わり?
それも気になるけど…
なんか部署の雰囲気悪いのか?

さっきのケンジって人…
マナミが通りかかった時、一瞬目が泳いだ。
作り笑いの左右差…本当の気持ちを隠すのが上手くない。

右ポケットが膨らんでいる。ペンをよく使う証拠。
新人だから、ちゃんとメモを取ってるのかな。

歩き方も控えめ。
書類の持ち方も丁寧すぎ。
時計の跡があるのに今日はしてない。

慌てて家を出たか…忙しすぎて忘れたか。
…
…マナミっていう人も…
毛先が少し乾燥しててドライヤーの使いすぎ…
時短の証拠かな。

書類をちらっと見てた時の視線移動が規則的。
完全にチェックリスト思考。
眉間のしわは慢性的な集中の証拠。
口元の左端が下がってるのは、 ストレスか不満の表れ。
ケンジくんに声かけられたとき、
髪を触る仕草の後。

さらに左手で右の手首をさする仕草。

ストレスを感じた時の無意識の動作かな。
現に、ケンジくんとの距離を少し保とうとしている。
意図的に距離を置いてる。
…実は彼のこと、迷惑に感じてる可能性大。
んーーー…
しかしタクトさんって誰やろ…
神様もいじわるやな。
なにもリーダーやる直前に、
こんな場面を見せなくても…
…
ん?
…神様…
…神様…
…
…)
バウ:「おうトクコ」

トクコ:「おうでたぁ!

ああああぁぁぁ……か、神…様」

ラク:「……」
トクコ:「……」
バウ:「……
…
今日もリアクション、ご苦労」
トクコ:「…え?
な、何この空気!
…わ、私の事故なん?」
(ラク:……)

ラク:「…あの、トクコさん」
トクコ:「はい?」
ラク:「…あ、いえ…」
バウ:「嬢ちゃん、地が出たな?」
トクコ:「え??」
バウ:「まぁワシはうすうす気づいてたけどな」

トクコ:「な…何を?」
バウ:「そのリアクション、
その言葉遣い…
…さては、
売れない芸人だな?」
トクコ:「ちゃうわ!
…
…
って、あ…」
バウ:「ふっふっふ…
やっぱ粉もんは毎日食べていらっしゃり…
はるんやろで、おまんなぁ?」
トクコ:「…ぐっ……」

ラク:「なぜ普段、標準語なのですか?」
トクコ:「これは東京に来たら、
そうなんねん!
関西人、意外と肩身狭いんやから!」
バウ:「…そうなのか?」
トクコ:「ちょっと興奮したときとか、
やっぱり関西弁が出てしまうけど…
でもでも、近い将来、
大阪都構想が実現したら、
きっと関西弁こそ標準語に…!
ふ、ふふふ……」
(ラク&バウ:…別にどっちでもいいな……)

ラク:「で、これから人事の方に会いに行くんですか?」
トクコ:「う、うん…そうだけど…
なんで分かったの?」
ラク:「これですよ。
昨日バウさんから、この砂時計のことは聞いたんですね?」

トクコ:「あ、その砂時計…」
バウ:「ついさっき強く反応してな。
そこで、もしやと思い来てみたら…
やはりお前さんがいたわけだ。」
ラク:「では、一緒に行きましょうか」
トクコ:「え!?い…一緒に??」
ラク:「?…
何か問題でも?」

トクコ:「べ…別に…」
(トクコ:な、なんか直前に色々ありすぎて、落ち着かない…)

バウ:「ガンバレよ。
あめちゃん、いるか?
ハッハッハ!」

バシッ!

バウ:「痛い!
か、神を殴ったな!」

トクコ:「これが本場のツッコミや」

(ラク:…
…気をつけよ……)


