~エピソード10~ラクとトクコ②~

ラク : 「……入りますよ?」

 

ラク(うわ…なんか空気悪いような……)

 

ラク:「バウさん、ちょっと…

こっちでお話しできますか」

 

バウ:「おう」

ラク:「なんかヘンなこと言ったんでしょ。

トクコさん、なんかひどく落ち込んでるじゃないですか。」

 

バウ:「うぉい!犬聞きの悪いこと言うもんじゃねぇ。

ワシはむしろ励ましてやってるんだ。」

ラク:「励ます?」

 

バウ:「あぁ…

お嬢ちゃんにはまだ見えてないもんがあるってな」

 

ラク:「それのどこが励ましなんですか。

おやつ抜きにしますよ?

バウ:「な、なんだと!?

じゃあお前が励ましてみろ」

 

ラク:「え?僕がですか?」

 

バウ:「そこまで言うなら、さぞうまく励ませるんだろ?

ヘッヘッヘ…(笑)

 

ちなみにさっき、嬢ちゃんの前の職場の上司から連絡があって、

かなり責めるような内容だったからな…」

 

ラク:「……なるほど……」

バウ:「昔のこと、思い出してんじゃねぇよ」

 

ラク:「……僕は……別に」

 

バウ:「だが…『タキサイキアの砂時計』が、

再度表れるキッカケにはなるかも知れん。」

ラク:「……そうですか、彼女が……

そうなんですね…」

 

トクコ:「あ、あの……」

ラク:「……あぁ、すみません」

 

トクコ:「ラクさん…も、動物と話せるんですか…?」

 

ラク:「……え?? いや‥ えーと…

ん??

ラクさんも?

……ということは、トクコさんもですか?」

 

トクコ:「えぇ、まぁ…」

 

バウ:「あ、そうらしいぞ」

ラク:「バウさん…

もっと早く言ってくださいよ…

…ちなみに僕が話せるのは、バウさんだけです。

他の犬や動物は、全然…

もしかしてトクコさんは、犬に限らないんですか?」

 

トクコ:「えぇ、まぁ…」

 

ラク:「それは…本当にすごいですね。

ずば抜けた観察眼にも、納得がいきますね…」

トクコ:「いえ…そんな…

あの、失礼しました。

変なご心配おかけしまして…

私はもう大丈夫ですから…」

ラク:「……えーっと……

その……」

 

トクコ:「……?」

 

ラク「す…過ぎ去りし日々の影は、

未来のキャンバスに新たな色彩を添えます。

 

あなたの…その経験は、

きっと明日の名画を描く筆になります…」

トクコ&バウ:「……は?」

ラク:「……あ、いや、

…えーっと…

励まそうと。

 

バウ:「なんていうか、アレだな…

ヘタクソだな、おまえ」

 

ラク:「…………やっぱり……

なんか向いてないんだよなぁ、

こういうの…」

トクコ:「ふ…ふふ…

アハハハ!

ラク:「??」

 

トクコ:「ありがとうございます。

ちょっと…元気出ましたよ」

 

ラク:「そ、そうですか?」

 

トクコ:「言っていただいたことは

全然印象に残ってないんですけど(笑)」

 

ラク:「ええええ!!??」

 

バウ:「確かにな。難解だったな

コンコン

ケンジ:「あ、お取込み中すみません。

人事の方がトクコさんを探していましたが…」

トクコ:「あ!そうだ!今日は人事のオリエンテーション!」

 

ラク:「そういえば、そうでしたね。

では続きまた、明朝お話ししましょう。

あ、トクコさん」

 

トクコ:「はい?」

 

ラク:「しばらくは、

人間の観察を止めてみてください

 

トクコ:「・・・え?

 

ラク:「理由は… また、明日」

 

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