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40代の働き方と生き方、そして中間管理職のストレスに向き合う
ラクとトクコのいる職場
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  2. ~エピソード15~お前が、出来なかったこと

~エピソード15~お前が、出来なかったこと

(退社時刻を過ぎたオフィス。

ほとんどの席が空になっている。)

(トクコ:…ケンジ君…

あれは、私が心を
閉じさせてしまったんやろか。

 

それとも…

マナミさんの言葉のせい?

 

いや、どっちでもなくて… 

 

そもそも、

ケンジ君の中にもともと

何かがあって…?

 

リーダーって、

難しいなぁ…)

トクコ:「…はぁ」

 

?:「…残業ですか?」

 

トクコ:「ひゃっ!!」

 

ケンジ:「す、すみません!

驚かせるつもりじゃ…!」

 

トクコ:「あ…

ケンジ君か…!

…び、びっくりした…」

 

ケンジ:「…残ってたんですね」

 

トクコ:「あ、うん…まぁね。

…ケンジ君は?」

 

ケンジ:「僕も…

なんか、帰れなくて」

 

 

ケンジ:「…あの」

 

トクコ:「うん?」

 

ケンジ:「今朝のこと…

ちゃんと話せなくて、

すみませんでした」

 

トクコ:「ちゃうちゃう、

私こそ…

なんか、変な聞き方してしまって」

(トクコ:…ほんまに、

我ながら中途半端やったわぁ…)

 

ケンジ:「……僕…

 

…なぜ動き回ってるのか、

自分でも分からなくなってきて…

 

っていうか…」

 

 

ケンジ:「…きっと、

役に立ちたいんですよね。

 

でも…

なんか最近、

空回ってるなって」

 

トクコ:「……うん」

 

(トクコ:今度は、

…急がない。)

 

ケンジ:「マナミさんのこと、

さっき怒らせてしまったし…

 

いや、

怒ってないって言ってたけど…

 

なんかもう、

自分が何をしたらいいか

わからなくなってくるんですよね」

 

トクコ:「…そうか

…しんどいよね」

 

ケンジ:「……え?」

 

トクコ:「何したらいいか分からないって、

けっこうしんどいやん」

 

ケンジ:「……」

 

トクコ:「私もそういう時期、あったから。

動けば動くほど、ズレてく感じ」

 

ケンジ:「…そうなんですか?」

 

トクコ:「うん。

 

なんかね、

“役に立とう”って気持ちが強すぎると、

 

相手が何を求めてるかより先に

自分が動いてしまうんよな」

 

ケンジ:「……」

 

トクコ:「…で、動いた後に

“違った”ってなる。

 

それが積み重なって、

だんだん…

怖くなってく」

 

ケンジ:「怖くなる…」

 

トクコ:「動くのが。

 

でも止まるのも怖い。

…みたいな」

 

ケンジ:「……それ、です。

まさに、僕もそれです」

 

(トクコ:瞬きが、増えた。

さっきまでの

“取り繕う瞬き”じゃない。

 

これは…

言葉が追いついてきた瞬きだ。

 

それに肩。

さっきまで少し前に出ていたのに、

今は…ほんの少し、落ちた。

力が、抜けてる。

 

…ケンジ君、今、

ちゃんとしゃべってる。

 

笑顔でごまかそうとしてない。) 

  

ケンジ:「…なんか、

ちゃんと言葉にしたの、

初めてかもしれない」

 

トクコ:「そっか」

 

ケンジ:「…トクコさんって、

なんで僕の様子とか、

分かったんですか?

 

…普段からも、

そんな風に、色々分かるんですか?」

 

トクコ:「…え…

いや…

 

いやいやいや…

全然分かってへんよ?

 

私も人のこと、見すぎて、

でもうまくいかなくて、

 

なんでやろ~って…悩んで」

 

 

ケンジ:「それ、解決したんですか?」

 

トクコ:「……まだ、全然」

 

ケンジ:「あはは」

 

トクコ:「ほんまにほんまに(笑)」

 

ケンジ:「……あの。

じゃあ、トクコさんは

どうしてるんですか、

 

そういうとき」

 

トクコ:「…うーん。

 

最近、ラクくんに言われてから

ちょっと変えたことがあって」

 

ケンジ:「ラクさんに?」

 

トクコ:「うん。

“見えただけで終わらせるな“って。

 

でも、

私なりに思ったんやけど。

観察はしても、

介入しすぎず、

まずはただ、そこにいることも

大事なんかなって」

 

ケンジ:「そこに…いる?」

 

トクコ:「うん。

何か解決しようとか、

役に立とうとか、

そういう前に。

 

声はかけてみるけど、

ちょっと間を置くと言うか、

様子を見てみると言うか、

…ただ、いる」

 

(ケンジ:……!)

 

ケンジ:「…あぁ…

なんか、

それ聞いて…

ちょっと分かったような…

 

それに、

楽になった気がします」

 

トクコ:「ほんま?」

 

ケンジ:「はい。

…なんでかな」

 

(トクコ:…よかった。

今度は、心を閉じていない)

 

(その頃、廊下の端。

トクコたちに見えない場所で

ラクが座っている)

 

バウ:「…聞こえてたか?」

 

ラク:「……まぁ、多少は」

 

バウ:「トクコ、

まぁまぁ

うまくやってたじゃねぇか」

 

ラク:「……うん」

 

バウ:「…なんだ、

嬉しそうじゃねぇか」

 

ラク:「……そうかな」

 

(ラク、手帳に目を落とす)

 

バウ:「…その手帳、久しぶりに出したな」

 

ラク:「……うん」

 

バウ:「ケイのか」

 

ラク:「……

 

ケンジ君を見てたら…

なんか、思い出してしまってね」

 

バウ:「……そうか」

 

ラク:「役に立ちたくて、

空回って、

怖くなって。

…ケイも、そうだったのかもしれない」

 

バウ:「……」

 

ラク:「ケイが距離を置いたのも、

迷惑をかけたくなかったから、って

後から知ったけど…

 

あいつも、きっと

“そこにいるだけで良かった“のに

 

僕が…

疑いの目で見ていたのかな」

 

バウ:「……ラク」

 

ラク:「見えすぎることと、

信じることは…

ちゃんと両立できる、

ってことを…

あのときの僕が

気づいていたら…」

(ラク、手帳をそっと閉じる)

ラク:「トクコさんは…

やっぱり、違う」

 

バウ:「…どこが」

 

ラク:「見えていても、

相手の前に

ちゃんといられる」

 

バウ:「……お前が、

できなかったことだな」

 

ラク:「うん。

…僕には、できなかった」

 

 

バウ:「…でもな」

 

ラク:「うん」

 

バウ:「お前、今日、

ちゃんとそこにいたろ。

廊下で。

何もしないで、ただ」

 

ラク:「……はは」

 

バウ:「それで十分だよ」

(遠くから、
ケンジとトクコの笑い声が、
かすかに聞こえてくる)

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