
(トクコ:…これで良かったのかな…)
??:「…これで良かったのかなって、顔ですね」
トクコ:「え??」
ラク:「…昨日はどうも」

トクコ:「ひゃっ!
…で…出たぁ!」

ラク:「…出たって…
お化けじゃないんだから💦」
トクコ:「…あなた……
また……」

ラク:「聞こえてしまいました」
トクコ:「…盗み聞きしてたの?」
ラク:「…偶然です。
でも、興味深い会話でした…
ちなみに、何が見えていましたか?」


トクコ:「…
絆創膏の上から、さらに小さな切り傷も。
おそらく、大量の資料を急いで整理してるとき、指を痛めた…

瞬きの数が多い…睡眠不足…

身体の姿勢や靴の汚れからによる作業の痕跡…

昨夜、たぶん何か慣れない作業をしていた。」

ラク:「そうですね…
そして…爪の痛みは、資料の再整理のとき、
急いでホッチキスを外そうとしたのかも知れません。

だからこそ、紙の角に折り曲げた跡が残っていた。

さらに厚めのファンデで寝不足を隠そうとした可能性…
また、男性のコメントから察するに…
彼女はきっと朝から『技術の田中さん』と、
電話会議でもしてたのでしょうね。
両耳付近の髪の不自然は、ヘッドセットを装着した跡かな…

(トクコ:…この子…!)

ラク:「今回、興味深かったのは…
あなたは、彼女に積極的に声をかけた。
…きっともう、何かに気づいても、
関わらないようにしていたあなたが…
『同じような経験がある』と言った。」
トクコ:「…そう…ね。
なんで…なんだろうね…」
ラク:「……」

トクコ:「…ていうか、ねぇ……
なんだか普通に話しちゃってるけど…
あなたは…いったい何者?」

ラク:「僕は…
…
…あなたと同じ…
でも、同じじゃない」

トクコ:「えぇ!?
ど、どっちなの??」
ラク:「…あなたには、
なぜ彼女が上司や同僚に相談できなかったのか…
そこまでは見えなかったでしょう?」
トクコ:「そ…それは…」
ラク:「実は彼女。
今の部署に異動してきたばかりなんです。」

トクコ:「!!」
ラク:「この部署に来てまだ2週間。
だから要領を得なかった。
何とか自分で解決しようとしていた。
…彼女、重心もわずかに右にズレていた。
きっと大量の資料の整理で、
長時間立ったままで足に負担だったのでしょう。」

トクコ:「そう…だったの…」

ラク:「今のあなたはまだ、
あなた自身が今見えているものだけを、
正しいと信じている。

…でも、
…
「話の中で、相手が省いた情報は無いか」
「相手にとって当たり前のことは何か」
「相手の世界観について知らないことは無いか」(※1)
そんな疑問を投げかけていくことも、観察には大切です。

トクコ:「……」
ラク:「…でも僕は…
…そんなことを続けた結果、
“見えたものを疑いすぎてきた”人間です」

トクコ:「見えたものを…疑いすぎた?」

ラク:「…先ほどの
あなたの言葉をお借りすると、
僕もあなたと同じような経験があります。」
トクコ:「え…?」
ラク:「そんなに一人で抱え込まなくても、
いいんじゃないでしょうか」

※1:観察力を磨く 名画読解 (早川書房) エイミー E ハーマン (著), 岡本 由香子 (翻訳) p170をアレンジ
