トクコが自宅で眠りにつく頃、
人影のない公園

バウ:「ここにいると思ったよ」




ラク:「……」
バウ:「あれから、どうだ?」

ラク:「…タキサイキアの砂時計の反応が…すごいね。
何かに共鳴しているみたいな…」
バウ:「…そうか。」
ラク:「…なんだろう。
やっぱりトクコさんが関係しているのかな。」

バウ:「そうかもな…
…
で、今日は、どうだった?」
ラク:「…彼女と話せたよ。
やっぱり観察力が異常に強い。
でも、まだちょっと…危なっかしい。
まるで昔の僕を見ているみたいだ。」
バウ:「…ケイの件が起きる前か。」
ラク:「……うん…
まぁ、その更に前の僕に似てるかも。」

バウ:「……」
ラク:「…まぁ、トクコさんに関しては、
僕の事情ばかり押し付けられない。
彼女も転職したばかりで、何かと大変だろうし。
…それに、リーダーの仕事を受けるかどうか…
それもまだ分からないしね。」
バウ:「……確かにそうだな…」

(バウ:ワシが様子を探ってみるか…)
次の日の昼
ランチ中のトクコ

(トクコ:はぁ…
転職して良かったんかな…
初日から変なことばっかり。
…あぁ、リーダーの話、もう断ろうかな…
考えるのもしんどい…)

(トクコ:今日もまた、どこかであのラクって子に会うんかな…
なんか…イヤやなぁ…)
??:「…ヘイヘイ!
そこの嬢ちゃん」
トクコ:「……?」
バウ:「…おう、
ワシワシ」

トクコ:「…お
お…ぎ…
ぎぃやぁあああ!!」

バウ:「…赤ちゃんか、お前は💦
あまり大声を出すな。
今、ワシの姿は…
お前にしか見えなくしてある」
トクコ:「ひいぃいい…
しゃ…しゃべった!
犬がしゃべった!
こここ…こわい…
の…呪われてる?
さ…サングラス、
似合ってない…」

バウ:「驚くついでに、
軽くサングラスをディスるのを止めろ。
落ち着け…
厳密には、ワシは犬では無い…
つくもがみ(付喪神)だ。」
トクコ:「つ…つくもがみ?
あの、道具に…神様が宿るっていう…
ま、まさか…」
バウ:「……そうだ。
ワシは古くから伝わる、
ある砂時計に宿る神だ。」
トクコ:「す…砂…時計?」
バウ:「ちょっと人のいないところまで移動しよう。
さっきも言ったが、今のワシの姿は他人には見えん。
…
…だから今のお前さんは、
勝手に驚いて、勝手にブツブツ言ってるように、周りから見えてる。」
トクコ:「うぅ…最近変なことばっかり…
わ…私の人生、
なんでこんなことに…」

バウ:「何を言うか。
ワシに会えるなんて、最高の人生だぞ」
(トクコ:そんな軽く言われても…)

バウ:「…この辺りでいいか」
トクコ:「あの、私…
会社の昼休み中で…」
バウ:「あぁ。知ってる。
だから、手短に話そう。
ワシの名はバウ。
カンタンに言えば、ワシはラクの連れだ。」
トクコ:「あの…子供の!?」

バウ:「そうだ。
あいつと一緒に、お前さんのことを見てきた。」
トクコ:「見てきたって…なんで私を?」
バウ:「それには長い経緯があってな。
…まぁ単純な話、お前さんとラクは似ているんだよ」
トクコ:「似ている?」
バウ:「どちらも、異常なほど鋭い観察力を持っている。
いや…ラクは、お前さん以上かもしれねぇ」
(トクコ:それは…なんとなく分かるな。)

バウ:「でも、その力を…
間違った方向に使ってしまった」
トクコ:「間違った方向?」
バウ:「ラクは自分の『観察力』に、知らないうちに頼り続けた。
そして 疑いの目で見続けた。
挙句…大切な人を失った。」

トクコ:「……失った?」
バウ:「ただ、ラクのせいじゃねぇんだがな。
…でも、相手を信じられずにいたことは確かだ」
(トクコ:…私も、そうなってしまうのかな…

見えすぎて、疑ってしまって…)
バウ:「…お前さんには、同じ道を歩んでほしくない。
だから今日、少し話しておこうと思ってな」
トクコ:「…あ、ありがとう」
バウ:「…実際、
もう既に生きづらさを感じてねぇか?」
トクコ:「…それは……」
バウ:「…見えすぎることの代償だな。
…
ちなみにこれが、ワシの宿る砂時計だ。
タキサイキアの砂時計と言う」
トクコ:「わぁ…きれいな砂時計…」

バウ:「ただ…これは実物では無い。
ラクやワシが念じれば、
このようにイメージとして出てくる。」
トクコ:「…こ、これ…
イメージ…なんだ」

バウ:「この砂時計が、お前さんに強く反応している」
トクコ:「私に反応??」
バウ:「ああ」
トクコ:「私と…この時計。何か関係があるってこと?」
バウ:「分からん。
その解明も含めて、ひとつ提案がある。」
トクコ:「?」
バウ:「嬢ちゃん、リーダーの話、少し考えてみてくれねぇか?」

(トクコ:え…?)

