~次の日、昨日と同じカフェにて~
(トクコ:「…よし…今日はおらんな…
いや…
ちがう、
いたわ💦
ラク:「大丈夫ですか?ツトムさん」
ツトム:「すみません、こんな朝早くから…
オフィスで話すより、こっちの方がいいかなと思いまして。」
(トクコ:あのラクって人。
朝カフェ派なんかなぁ…
でもこっちのことは知らんやろうし、
ちょっと声聞こえる位置に座ってみよかな…)
ラク:「いえいえ、全然問題ありませんよ。」
ツトム:「実は昨夜、私が営業部に送ったデータについて、
読みが甘いと…〇〇部長から厳しいメッセージが来てるんです」
ラク:「なるほど。
具体的にはどういうメッセージでしょうか?」
ツトム:「プロフェッショナリズムに欠ける、
クライアントに対して提供する情報の質にも影響する可能性があった…と」
ラク:「そうですか。それは大変でしたね。
いつも冷静なツトムさんが、珍しいですね。
…何かありましたか?」
ツトム:「申し訳ありません。
実はちょっと飼っている猫が最近病気になり…
その…気になってしまい…」
(トクコ:えぇ!!?
あの顔で、ネコ!?
…って、しょうもないとこにツッコんでばっかりやな、私…
…なんか注文しよ…)
ラク:「なるほど…それは確かに心配ですね。
気持ちが沈んでいるかもしれませんが…
ちょっと一緒に相手部署への返答内容と、
今後の対策を一緒に考えていきましょうか」
ツトム:「どうもありがとうございます」
ラク: 「ツトムさん、今回提出した情報の質…という点で、
どのように思いますか?」
ツトム: 「そうですね…データを検証するプロセスが、
不十分だったのかなと思っています。」
ラク: 「…ふむ……」
ラクは頷きながら、一枚のペーパーナプキンに何かを書き始めた。
ラク: 「前提を少し考えて見ましょうか。
ツトムさんのデータ分析の前提は、どうでしたか?」
ツトム: 「え・・・と。
市場の成長率を、過去のデータに基づいて予測しました。」
ラク: 「そうですか…でも市場は常に変化していますね。
市場の最新の動向や変動要因は、盛り込みましたか?」
ツトム: 「いえ…そこは見落としていました…」
ラク:「ではそれは入れておきましょう。
読みが甘いと言われているのであれば、そこかもしれません。」
ツトム: 「分かりました」
ラク:「それから…
営業部は今特にダイエット系のペットフードを売るように言われているはずです。
その辺りの数字も一緒に渡してあげると、印象が良くなるかなと思います。」
ツトム: 「ありがとうございます。そちらも確認してみます。」
(トクコ:……ふむ…
相手の…ツトムっていう男性の表情から、悲壮感が消えた。
朝にオフィスに行く前に誘えて、
ちゃんとミスの事実を伝えられて、
そもそもの表情や口調も固くない。
…全面的にラクっていう人のことを信頼してるな)
ラク: 「他は…何か、気になるところはありますか?」
ツトム: 「いえ、今のところは…」
ラク: 「では、取り急ぎ私の方から〇〇部長にはお詫びと具体的な指摘を再度求め、
さらに今後のプランについてカンタンにお伝えしておきます。」
ツトム: 「どうもありがとうございます。
私の方も、修正案が出来次第すぐ〇〇部長に送ります。」
ツトム: 「あ、ラクさん、ここは私が払っておきますので、
先にオフィス行っててください」
ラク: 「ありがとうございます。あ、経費精算はちゃんとしてくださいね。
それから、猫のこともお大事に…」
ツトム: 「ありがとうございます。」
(トクコ:………シンプルやな……
(トクコ:…ていうか、何気ない会話に見えるけど、
なんやろう。この違和感は……)