(トクコ:…なんやろう。この違和感は……
…分からへんな…
さすがにあの一瞬だけじゃ。
もうちょっと観察してみないことには…
でも…
昨日のカフェでの観察のように、
ざっくりしたものはともかく…
観察内容を「分析」するには、
もっと情報が要る。
あぁーー…
あと、人事への返答、どうしよ…)
???:「悩んでいるな…」
…
トクコ:「…え?」
???:「……無駄なことだ」
…
トクコ:「…無駄??」
トクコ:「
うぉ、
い、
え、
あ… 犬が… サングラス?」
???:「お嬢ちゃん、
なかなか斬新なリアクションだな。
…まぁいい。
しかし、やはりお嬢ちゃん、
ワシの言ってること、分かるのか?」
トクコ:「え……えぇ、まぁ…
ナイショにしてますが…
…分かります。
…動物の言ってること。
あと、植物も…」
???:「そうか…
なんとなく、そんな気がしたんだがな…
やっぱり、アンタか。」
トクコ:「…やっぱり…?アンタ?」
?:「いや、気にしないでくれ。こっちの話だ。
…ワシの名は、バウじゃ。
見知りおけ…
かつてはこの辺りをシメてた、
伝統あるグループのリーダーだ…」
トクコ:「…シメてたって、…何…を??」
バウ:「そりゃあおめぇ、決まってんだろ…
この辺りの兄弟たちをだよ…」
トクコ:「あ、お、お兄さんなんだ」
バウ:「ちげぇわ!
ワシはなぁ!
この辺りの族のヘッドだったんじゃ!
走り屋で名高い…
『独愚風土』」っていうなぁ!」
(トクコ:…ドッグフードやん…)
バウ:「お嬢ちゃん、名前は?」
トクコ:「あ、トクコっていいます。」
バウ:「そうか… トクコか…
今時、
なんとなく古風だな」
トクコ:「…やかましいわ」
トクコ:「で・・・
・・・
そのドッグフードのバウさんが、
何か私にご用でしょうか」
バウ:「独愚風土をカタカナにすなぁ!
犬のエサ売り歩いてるオジサンみたいになるだろが。
…まぁ、いい。
いや、悩んでるんだろう。
しかし、悩みなど不要だと言ってる」
トクコ:「なんでですか?」
バウ:「カンタンだ。
見ようとしていないからだ」
トクコ:「…え…?」
バウ:「見ていないものが、見えるわけないだろ」
トクコ:「………?」
バウ:「見ようとしていない。
見ていない。
それでいて、『見えない』と悩んでる。
…
…違うか…?」
トクコ:「……私が、
…見ようとしていない…?」