トクコ:「……分かりました!
トクコ:「…あ…
でもその場合…
後でラクさんにも、
手伝ってもらいますからね?」
ラク:「え?」
トクコ:「え?」
ラク:「………なんか、嫌だなぁ…」
トクコ:「何か言いました?」
ラク:「……いえ、別に」
トクコ:「…繰り返しになりますが、
短時間だと、
かなり簡易的になりますので!」
ラク:「はい。問題ありません。」
トクコ:「……
…イスパイアル…!」
トクコ:「……!
…!!
…!!!
トクコ:「男性の身長は 180センチ前後 黒っぽい茶色のジャケットとグレーのTシャツ 黒髪で黒いあごひげ 口ひげ髭は整っている 眉は一般より太い 視線は後ろを見るか見ないかの範囲 歯を見せて笑っている 左側にやや口角が上がっている 目は少し開き気味 髪は短いが一部立っていてスタイリングされているように見える 特に耳飾りなどは無し 皮膚はやや白め…女性の方は見ていない」
(ラク: …これは…!)
トクコ:「女性は…身長は165センチ前後 黄色いTシャツ黒のボブヘア 真ん中分け前髪は眉にかかるくらい 眼鏡をかけていて黒い淵に透明のフレームレンズ 髪の具合からやや左下に顔が傾いているか 眼の色素が薄めで黄色がかっている 視線は男性に向けられている 前髪は眉にかかるほどの長さ 眉はやや外側が下がり気味 耳は髪に隠れていて耳飾りやピアスは無し 口元は笑っていない 肌の色は白い 視線は男性の方を向いている」
ラク:「………!!」
トクコ:「…ふーーーー…
…
…まずはこれくらいにして…
本来であれば、もっと時間をかけるべきですけど…
私は普通の人なら5秒かかる観察を、1秒でできます。
もちろん、より時間をかければ、より多くの情報が入ります。
…ラクさんのコメントをいただきたいところですが、
まず簡易的に見るのであれば、
視線・表情・口元・話し方から、
男性側は女性側のコメントを聞く態度を見せず、
逆に女性側は、男性側を厳しく見過ぎている…
男性の方は振り返りもせず、
女性の方は後ろからでも厳しい言葉をかけている…
そういったところが、争いの原因かも…」
(トクコ:しまった!)
(ラク:
か…観察って…こういうことか!
まず、かなり注意深く「見る」んだ。
これはシンプルに見えて難しい。
常人にも出来なくはないが、
訓練が必要だ…
そもそも限りある注意力を、
ここまで1点に集中することが必要。
脳の前頭前皮質における処理能力を使い、
細部、関係性、パターン…
普通なら理解するのに、もっと時間が要る。
何より驚きなのが…
あれだけ高速で情報を処理したにも関わらず…
最初の観察の時点では、
バイアスがほとんどかかっていない。
普通なら、
「きれい」「気持ち悪い」「変」「良い」など、
もう少し主観的な表現が入りそうだ。
「知らない人間」を対象にしているから…?
あるいは脳が処理した内容を『伝える』際に、
主観的表現を意図的に
抑制して伝えている…?
イスパイアル…
古い英語表現で『観察』の意味か。」
トクコ:「あ、あの…」
(トクコ:
あー…
やってもーた…
何をマジメにやってるんやろ、私は。
めっちゃ何か考えてはる…)
ツトム:「…あれ?ラクさん?」
(トクコ: …おっとぉ…?)