~エピソード7~トクコの観察~

トクコ:「……分かりました!

トクコ:「…あ…

でもその場合…

後でラクさんにも、

手伝ってもらいますからね?

 

ラク:「え?」

 

トクコ:「え?」

 

ラク:「………なんか、嫌だなぁ…」

 

トクコ:何か言いました?

ラク:「……いえ、別に」

 

トクコ:「…繰り返しになりますが、

短時間だと、

かなり簡易的になりますので!」

 

ラク:「はい。問題ありません。」

 

トクコ:「……

…イスパイアル…!

トクコ:「……!

…!!

…!!!

トクコ:「男性の身長は 180センチ前後 黒っぽい茶色のジャケットとグレーのTシャツ 黒髪で黒いあごひげ 口ひげ髭は整っている 眉は一般より太い 視線は後ろを見るか見ないかの範囲 歯を見せて笑っている 左側にやや口角が上がっている 目は少し開き気味 髪は短いが一部立っていてスタイリングされているように見える 特に耳飾りなどは無し 皮膚はやや白め…女性の方は見ていない」

 

(ラク: …これは…!)

 

 

トクコ:「女性は…身長は165センチ前後 黄色いTシャツ黒のボブヘア 真ん中分け前髪は眉にかかるくらい 眼鏡をかけていて黒い淵に透明のフレームレンズ 髪の具合からやや左下に顔が傾いているか 眼の色素が薄めで黄色がかっている 視線は男性に向けられている 前髪は眉にかかるほどの長さ 眉はやや外側が下がり気味 耳は髪に隠れていて耳飾りやピアスは無し 口元は笑っていない 肌の色は白い 視線は男性の方を向いている」

ラク:「………!!」

 

トクコ:「…ふーーーー…

…まずは第一段階の『観察』は、

これくらいにして…

本来であれば、

もっと時間をかけるべきですけど…

私は普通の人なら5秒かかる観察を、1秒でできます。

もちろん、より時間をかければ、

より多くの情報が入ります。

…ラクさんのコメントをいただきたいところですが、

まず簡易的に見るのであれば、

視線・表情・口元・話し方から、

男性側は女性側のコメントを聞く態度を見せず、

逆に女性側は、男性側を厳しく見過ぎている…

男性の方は振り返りもせず、

女性の方は後ろからでも厳しい言葉をかけている…

そういったところが、争いの原因かも…」

 

トクコ:しまった!)

 

(ラク:

か…観察って…こういうことか!

まず、

かなり注意深く「見る」んだ。

これはシンプルに見えて難しい。

常人にも出来なくはないが、

訓練が必要だ…

そもそも限りある注意力を、

ここまで1点に集中することが必要。

脳の前頭前皮質における処理能力を使い、

細部、関係性、パターン…

普通なら理解するのに、もっと時間が要る。

何より驚きなのが…

あれだけ高速で情報を処理したにも関わらず…

最初の観察の時点では、

バイアスがほとんどかかっていない。

普通なら、

「きれい」「気持ち悪い」「変」「良い」など、

もう少し主観的な表現が入りそうだ。

「知らない人間」を対象にしているから…?

あるいは脳が処理した内容を『伝える』際に、

主観的表現を意図的に

抑制して伝えている…?

イスパイアル…

古い英語表現で『観察』の意味か。

 

トクコ:「あ、あの…」

 

(トクコ:

あー…

やってもーた…

 

何をマジメにやってるんやろ、私は。

めっちゃ何か考えてはる…)

 

ツトム「…あれ?ラクさん?」

(トクコ: …おっとぉ…?) 

上部へスクロール