~エピソード9~ラクとトクコ~

トクコ:……

はぁ… 一人になると考え込んでしまうなぁ…

ラクさん、まだかな…)

 

バウ:「よう、嬢ちゃん!」

 

トクコ:えぇぇええ!??

…な、なんでこんなとこに!

 

 

随分お久りぶりじゃないですか…

ドッグフードのバウさん…」

 

バウ:独愚風土、じゃ。

カタカナにするなと言っておろうが。

エサ売りのセールスマンか」

 

トクコ:「こんなことで、何してるんですか?

警備員、呼んであげましょうか?

 

バウ:「不審者扱いすなぁ!

ワシはここで働いとるんじゃ」

 

トクコ:「えぇ??」

 

バウ:「まぁそんなことはいい。

なんじゃ…

なんか浮かない顔しとったの」

 

トクコ:「……あぁ、

…あなたのせいですよ。

見ようとしてないとか言うから、

私の…その…観察力が…」

 

バウ:「観察力?」

 

トクコ:「…あ、いえ、別に…」

 

バウ:「違うな。」

 

トクコ:「え?」

バウ「嬢ちゃんが見ていないのは、

嬢ちゃん自身だよ…」

 

トクコ:「私自身…?」

 

バウ : 「観察…?

自分自身が見えていないのに、

なぜ外の世界を見ようとする?」

 

トクコ:「…なっ!

あっ…あなたが、あなたが…

何を知ってるんですか!

 

ピロピローン♪

トクコ:……私の、スマホ?)

 

トクコ:「…ちょっと待ってください…」

バウ : 「さらに浮かない顔になったな。大丈夫か?」

 

トクコ:「…前の職場の上司からです。」

 

バウ : 「……そうか。

何かイヤになることか?」

 

トクコ:「…読んであげましょうか。

突然の連絡で悪いけど、ちょっと聞きたいことがあってね。君が去った後、正直かなり困ってるんだ。特に君が管理していたプロジェクトの引継ぎ、ちゃんと完了してた?こっちでは君が最後に何をしていたのか、全く手掛かりがないんだよ。マニュアルもどこに保存されてるのか分からない。正直言って、君の気配りが足りなかったんじゃないかと思うよ。物事をもう少し広い視野で見て、後任のことも考えるべきだったんじゃないの?君がもう少し周りと同じリズムで動いてくれていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。もし覚えているなら、マニュアルの場所や未完了のタスクについて教えてもらえないかな?こっちも忙しい中、君の残したゴタゴタを片付けるのに苦労してるんだ。何とか協力してくれると助かるよ。

…だそうです」

 

バウ : 「……そうか。

…どんな気分だ?」

 

トクコ:「…聞くまでもないやろ……

私はちゃんとやってた…!

マニュアルだって作った!

引継ぎだってした!

……わ……私は……」

(植物たち:……………)

 

(バウ:「な…なんだ?

植物…が、ザワついてる??

幻覚でも見てるのか…?」

トクコ:「…あ、す、すみません…」

 

バウ:「……」

 

トクコ:「……え、と、

…ちょっともう、

一人にしてくれますか。

あなたには関係ないでしょ」

 

バウ「……今、…見えたはずだ」

 

トクコ:「……え?」

 

バウ:「……嬢ちゃん自身だよ」

 

トクコ:「……」

 

バウ:「……目を逸らすな。

これからの職場で、

嬢ちゃんが実現してみせろ。

そんなアホ上司のいる

クソみたいな職場じゃない、

嬢ちゃんの理想をな…

 

トクコ:「………そんなこと……

…できるわけないやん……」

 

バウ:「そうでもないさ。

…嬢ちゃんには見えてないものが

もう一つあるからな。」

 

トクコ:「…まだ何かあるんですか?」

 

バウ:「あぁ。

それは…

嬢ちゃんのことを

一緒に考えてくれる存在だよ」

ラク : 「……入りますよ?」

 

 

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